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こんな国に生まれて…日本狼…純粋バカ一代…山崎友二

こんな国に生まれて…日本狼…純粋バカ一代…山崎友二

「キリスト教」

【1】
巡視車の運転手さんも民間会社からの出向で、いつもの人が休みの時には替わりの運転手さんが来ていた。
ピンチヒッターの運転手さんは、70歳代だそうで、なにかキリスト教系の新興宗教の信者らしい。
俺は、けっこう聞き役なので、そのおじいさんのキリスト教の話も聞いていた。
そのおじいさんが言うには、鉱物のウランは期間が過ぎるとプルトニウムになるので、普通はウランがなくなってしまうものなのだけれど、今現在も地球上にウランが存在するのは、神のしわざなのだそうだ。
俺は「なんで神様はウランを作るんですか?」と聞いてみた。答えは「ウランは神が作ってるんです」
「いえ、そうじゃなくて、なぜなんの目的で神はウランを作る必要があるんですか?」
「それは神が起こした奇跡なのです」

【2】
「別にそんな奇跡は起こらなくてもいいんだけどね。ウランって原爆の材料だから、神じゃなくて悪魔なんじゃないの?」
「いいえ、悪魔ではありません。神なのです。ウランがあることが、神が存在する証拠なのです」
「へぇ、神様はいるの?いるんだったら、一度会わせてもらえるかな。ちょっと言いたいことがあるんだよな」
「え?神は人間の前に現れません」
「じゃあ、神様はいないことの証明になっちゃうよ。一度会って話がしたいんだよな」
「話ってなんですか。話ならうちの幹部が聞きますが…」
「教団幹部に用はないんだよね。直接神様と一対一で話がしたい」
「神は姿を現しません」
「いいから、神様出せよ。びびってんの?」
「いえ、神はびびったりしません」

【3】
「あなたたちの神様は『信じる者は救われる』って言ってるでしょ?それ、おかしいよ」
「いえ、信じる者だけが救われるのだから、信じることが大事なんです」
「神はすべての人間の創造主なんだろ。信じる者は救うけど、信じない者は救わないっていうのは、自分の子供がなつかないから育てないっていう親といっしょだよ」
「いえ、神は人間と違います」
「たしかに違うね。人間以下だね。ほんとに創造主ならすべての人間をすくいなよ。それを言いたいから、表に出てこいって言ってるのに、出てこないんだから、要領のいい弱虫だね」
「神が弱虫だと言うんですか」
「もう、言ったよ」
月に一度くらいしか会わない人だから、思いっきり言ってやった。ちょっとすっきりした。
(終)


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